利害関係者〜あるいは、たまにはRimoのことも思い出してあげて下さい〜


自分もブックマークした先週のNHK杯「羽生対中川」戦の逆転劇だが、梅田望夫氏があっさりしたエントリを書いたところ、窪田義行六段がコメント欄にて丁重に抗議して、エントリ本体よりコメント欄が注目されている。大した量ではないので、いちいち経緯を説明しない。以下のリンク先のコメント欄における議論を見ていただけばよろしいだろう。


これに対する反応は例えば、以下のようである。


えーと。



皆さんRimoのことを忘れていませんか?



もしかしたら梅田氏ご自身も含めて。

もう一点、梅田氏の当惑ということについても触れておこう。自分のブログが注目されていることについては、氏自身、十分自覚していただろうが、「ニコニコ動画を見たよ」といった軽い気持ちのエントリーに、まさか日本将棋連盟所属の現役棋士からクレームが付くとは思いもよらなかったのではないだろうか。ベストセラーを物し、ブログも注目されているとは言え、自分は市井の人間で公人ではない。そんな自分の私的発言に、まさか千駄ヶ谷から物言いが付くとは・・・。

有名人はグレーなものには言及しない方がいいという意見ですね。確かにそれは一理あります。ただ、ニコニコ動画については一視聴者にすぎない梅田さんに自重を求めるのもやりすぎという気がします。


言うまでもなく梅田氏は株式会社はてなの取締役であり、はてなRimoというサービスを運営していて、それは公衆送信権との関係で言えばニコニコ動画と大して違いの無いサービスである*1。である以上、例えば梅田氏の次のような文章もそういう文脈で読まれ得るということを考慮した方がよいのではないか。

NHKにとって将棋番組の映像などロングテールロングテール。そういうロングテール映像については、特に今回のような素晴らしい内容が生まれた場合、「最善手」は、その映像をNHKが自らサイトで無償公開してファンを増やす(需要を増やす-->視聴率を上げる)ような動きをするのが合理的判断と考えます。「次善手」が黙認なのだと思います。そういう考えから、特にニコニコ動画を見たことを隠しませんでした。


これをもって、株式会社はてなの公式見解だと言う気はさらさら無いが、少なくとも梅田はてな取締役は単なる一ユーザーではなく利害関係者の一人ではあろう。どうして誰もそのことを指摘しないのだろうと不思議に思ったのだが、もしかして誰もRimoのことを気にしていないのだろうか?いや、自分も使ったこと無いけど。




窪田六段のおっしゃることにも気になることがある。

当該画像のアップロードに関しては「干渉」というより「(営業)妨害」として、NHKさんはご認識しておいででしょうし、私も感心しかねます。

将棋連盟が最善手?の自発的履行を「促す」以上、内容も含めて考慮すれば「干渉」に相当します。

先のコメントでは特に触れませんでしたが、一個人としての要求でも「公器たるNHKさん全体のより健全な有り様」「視聴者全体の裨益拡大」に関する物ではなく、「将棋コンテンツのみの健全な有り様」「将棋界のみの裨益」に就いての物であれば、受信料に依拠するNHKさんのビジネスモデルを揺るがしかねない内容である以上、著しく説得力を欠くでしょう。


ことが民放であればこれでいいような気がするのだが、今回はNHKである。NHKに対する『「(営業)妨害」』とか、「NHKさんのビジネスモデル」というのはどうにも違和感がある。NHK営利団体ではなく、その所有者はぐるっと回って言うと国民だからだ。なにせ「みなさまのNHK」であるので、NHK自身もこういう問題の際は、NHK以外の権利者(出演者であるとか、NHK以外の番組制作者)の権利保護を前面に出しているはずだ*2。埼玉県にあるNHKアーカイブスが利用料無料なのもそうした考えからのはずだ。


【追記】 窪田六段のブログと関連エントリ。(タイトルが微妙に哀・戦士風味。I pray, pray to bring near the New Day.)

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*1:ニコニコはこれに加えて同一性保持権が関係するような気がする。

*2:そのNHK以外の番組制作者がNHKエンタープライズだったりして、話がよりややこしくなるというのが現状。