答え合わせ


Sonyの2007年度第二四半期(上期)決算説明会がありました。先日のエントリで触れたことがどうなったか、見てみましょう。


基礎資料はこちらにまとまっています。


一つ目のリンクは財務諸表等の諸データが過去数年分にわたって揃っています。二つ目のリンクは今回の説明会の分だけですが、スライドと音声によるインターネット中継の再放送がしばらくの間聞けます。大根田CFOはなかなかいい声をしてらっしゃいます。


PS3の2Q売上台数は131万台。上期計で202万台。


私は前回のエントリで、

上期はざっと150万台、どんなによくても200万台であろう。

と書きましたが、その「どんなによくても」な数字があっさり出ました。目出たい限りです。

PS3の今期売上目標台数1100万台に変更無し。


インターネット中継の後半、質疑応答の中で出てくる話題ですが、大根田CFOの発言をまとめるとこんな感じです。

  • 実績は当初目標より37万台程低い(この当初目標が2Qのみなのか、上期を通じてなのか少しはっきりしない。)
  • 最終的に目標を若干下回るかもしれないが、8-900万台に終わるというようなことは想定していない。
  • 値下げ効果により、欧州では2〜5倍程度売上が伸びている。


他機種の例年の売上を見ると分かりますが、ゲーム業界は年末商戦の影響が大きく、3Q(10〜12月)は他四半期の倍以上の売上が通例です。そのため、上期:下期=1:2くらいになることは普通に想定できます。ただ、これだと上期の2倍の400万台ということで、合計で600万台にしかなりません。前回のエントリで私が出した数字の根拠はこんなところだったわけです。値下げ効果、ソフトが増えてくることなどで、さらに2〜300万台の売上増というのは、実現可能な目標として十分にあり得ると思うのですが、そんな低い数字は想定していないとのこと。


注目すべきは「当初目標より37万台程低い」というところで、目標に達してはいないけれど、1100万台全体から比べれば相当に小さい数字です。つまり、下期に残り900万台近くを売るということは、当初からある程度予定済みだったことを示唆しています。


で、残り900万台を半年で売り上げることがどのくらい凄いかということですが、ライバルである任天堂Wii売上台数の推移を見てみましょう。

Wiiは昨年の11月に北米で発売され、12月以降に日本・豪州・欧州と続きます。実質12月スタートとみましょう。それで、売上数の推移ですが、2007年3月の年度末までの実質4ケ月の間にまず584万台の販売台数になっています。年度が替わって次の四半期に343万台、累計で927万台です。PS3の今年度下期の目標台数に近い数字が出て来て助かりました。Wiiが900万台売るのに約7ケ月かかったということが分かります。


というわけで、PS3が下期900万台売り上げるというのが、どのくらいの勢いかというと、昨年末のWii販売以来またはそれ以上の勢いだということです。まあ、前例があるわけですから、あり得ない数字では無いと考えることもできます。Wiiは品切れが続きましたが、PS3は在庫もあり、生産能力も十分にあるわけですから、その分は有利と考えることもできます。


しかし、あのWiiの勢いの再現ですから、作る人も売る人も大忙しで、大変そうですね。


棚卸資産は711億円の評価損を計上しつつ、総額で200億円近く増加。


ゲーム部門の2Qの赤字は967億円ということで、好調なエレクトロニクス部門の黒字とほぼ匹敵する額となってしまいました。その大きな要因がこの棚卸資産の評価損にあるようです。やはり質疑応答の中で出てくる数字ですが、711億円。これは、つい最近行われた値下げの影響も見ているということで、将来発生する赤字を先取りした形になります。とはいえ、下期にもこれほどの規模では無いにしろ、まだ発生するだろうということです。


にもかかわらず棚卸資産の総額は、今年の6月末時点での2,270億円から、2,478億円とほぼ200億円増加しています。これってつまり、6月末の評価額ベースで評価損と合わせて900億円近く2Qに生産したということなのでしょうか?


昨年度決算時点での棚卸資産総額が1,988億円で、この時点での在庫は約190万台ということが分かっています。PS2PSP分が分からないのではっきりしたことは言えませんが、増額分の大半はPS3と見ていいでしょうし、1台あたりの在庫評価額は下がっていますから、現在の在庫数量は190万台よりかなり多いということは間違い無さそうです。


大根田CFOは正確な在庫数量については明かさず、年末商戦に向けてのものなので在庫過剰とは考えていないということでした。年末商戦までもう2ケ月しかありませんし、半年で900万台売るのだとすれば、現時点でたとえ400万台社内在庫があったとしてもたしかに多過ぎるということは無いのでしょう。

PS3ソフトの販売本数は2Qだけで1,000万本以上。累計で2,840万本。


ゲームビジネスというのは、ゲーム機本体とソフトのライセンス収入の二本建てで稼ぐのが大前提です。“戦略的な価格設定”により、まだしばらくの間、PS3本体は定価で売っても赤字ということが決まっていますから、ソフトの売上は大変重要です。さらに新型のPS3ではPS2互換機能を削ってしまいましたから、PS3ソフトの売上はさらにさらに重要になるわけです。


そのPS3の売上本数を見ると、2Qだけで1,030万本だったそうです。「モンスターハンターポータブル2nd」などで最近好調と言われているPSPソフトの販売本数が1,260万本ですから、さほど遜色ない数字です。これにより、昨年の発売以来の累計は2,840万本になります。


ここを見ると、PS3の全世界での発売タイトル数が分かります。日本では発売されていないタイトルが相当あるようで、案外多いという印象です。昨年の発売開始から今月末までのタイトル数を数えると111タイトルになります。今月末まで数えたのは、ソフトの正式な発売よりもSonyの売上のタイミングは早くなるはずだからです。


さて、2,840万本÷111タイトル=25.6万本/タイトルとなります。PS3のソフトは1タイトル当たり、平均して25万本以上販売されていることになります。


重要なのは、これはSonyにとっての売上であって、店頭で販売される数では無いということです。2,840万本は、ユーザーが買ったものと、まだ店の棚や問屋の倉庫に眠っているもの(流通在庫)の両方を含んでいます。それにしても平均25万本はすごい。


【追記】任天堂ソフトの売上数値を読み間違えていたので、以下の段落を改稿しました。(10/30)


ちなみに任天堂の2QのWiiソフトの販売本数は2,099万本ということで、PS3の同期のほぼ2倍です。発売以来の総販売本数は約6500万本。タイトル数は約180です。


単純に計算すると36万本/タイトルとなって、PS3よりも多いのですが、この中には任天堂自身のソフトのうち100万本を超えるヒットになったタイトルが6つ含まれています。これは「Wiiスポーツ」(1,186万本)のような本体同梱品や、Wiiリモコン付きの「初めてのWii」(632万本)を含む数字なわけです。その6タイトルだけの合計が、2552万本。これを除くと平均は大きく下がって約23万本/タイトルになります。PS3にもミリオンヒットタイトルが2本*1あることを考えるとと、ほぼ同水準と言っていいでしょう。


PS3に対するWiiの本体の普及台数が、発売以来、ほぼ2.5倍あったことさえ考えなければ。


PS3のソフトはものすごく平均的に売れるんでしょうか?流通在庫はどういう状態なんでしょうか?それとも、そもそもSony任天堂ではソフトの販売本数の数え方が違ったりするのでしょうか?何か自分が全然つじつまの合わないことを書いているような気がして、不安になります。

決算発表会なので、人事の話は無し。

考えてみたら、これは当たり前のことでした。というわけで、トレットン氏の去就については当分このままということになります。

まとめ

まあ正直、楽観論は少し早かったかなあ、と。おっと、何と言っても向こう半年間で900万台なわけですから、Sonyさん的には楽観的というか強気というか、全然大丈夫という感じです。頑張って下さい。


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*1:Resistance: Fall of ManとMotorStorm