“戦略”

アングルといえば、見方を変えるというのは大事なことである。


昨日、8月1日よりオーマイニュースがコメントの投稿者も“市民記者”に限ると発表した。直接の理由はこんな感じ。

しかし最近、一部の匿名コメンテーターがコメントの趣旨とは無関係にもかかわらず、市民記者の個人情報を公開するという悪質なマナー違反を犯しました。


発表の翌日には毎日新聞にこれに関する記事が掲載されている。

記事の内容から見て取材の時点*1でこの処置が事前に予定されていたことが分かる。一応、他紙も見てみたが今日の時点でこの件を取り上げているのは毎日だけである。そういえば、鳥越編集長は毎日新聞社出身だった。

もっとも、この方針自体は先月には発表されており、いわば“既定方針”である。これが7月13日。

また、8月末に創刊予定のオーマイニュースβ版では記事に対するコメントが可能となります。これについてはペンネームなどでのコメントを可能とするかどうか検討中ですが、いずれにせよオーマイニュースに「準市民記者会員」として実名で登録する手続きを取らなければ書き込みができない形を取ります。記事に対するコメントにおいても、「責任ある参加」を促すためであり、オーマイニュースは完全匿名による誹謗中傷や無責任な発言などを「市民記者 の責任ある参加」とは考えていません。

この3日前には鳥越編集長のインタビューが出ていて、鳥越編集長の発言はこんな感じ。

――2ちゃんねる2ch)やブログなど、発言の場はたくさんあるが。

 2chはどちらかというと、ネガティブ情報の方が多い。人間の負の部分のはけ口だから、ゴミためとしてあっても仕方ない。オーマイニュースはゴミためでは困る。日本の社会を良くしたい。日本を変えるための1つの場にしたいという気持ちがある。

このインタビューは読売他各紙が掲載しているが、一次配信元はITmediaである。久しく忘れていたが、ITmediaの親会社はソフトバンクである。


時系列を整理すると、

  1. OhmyNews開店準備中Blogの開設が6月1日
  2. 6月中はたいした数のコメントはついていない。
  3. 7月も同傾向かと思いきや、10日のインタビューが出て以後、コメント数が増加。
  4. 7月13日にコメントの投稿者を“市民記者”に限ると方針発表。
  5. 7月28〜29日あたりで“市民記者の個人情報を公開するという悪質なマナー違反”発生。
  6. 7月31日にコメントの投稿者を“市民記者”に限ると再度発表。
  7. 8月1日に“市民記者”制限開始。毎日新聞で報道。
  8. 8月28日創刊予定。

という次第である。


最終的にオーマイニュース側に残された“見解”としては、
「創刊までに広く意見をつのるため、コメント欄をオープンしてきたが、2ちゃんねらーを初めとする匿名者によって、市民記者の個人情報が暴かれるなどの事態に至ったため、コメント欄への投稿を市民記者登録済みの人物のみに制限した。なおこれは当初からの方針であり、なぜならオーマイニュースでは匿名による誹謗・中傷・暴言・侮辱などを『責任ある参加』とは考えていないからである。」
というところだろうか。(念のため補足しておくが、これは私が想像して書いたものであって、オーマイニュースがこの通りの見解を出しているわけではない。)

個人的には、社会的な“建前”からするとこの見解なら充分に通るだろうと思う。そう思って見ると、ここまでは戦略的に筋の通った流れだとも言える。意地悪く書くとこんなふうか。

2ちゃんとはどうせ対決は避けられないのだから、早めに一戦交えて結果を出しておく。納得させることなどあり得ないが、もともと読者層としては大して期待していない。Yahoo内のコンテンツをたどることが“インターネットする”ことだと思っているような層がターゲットであり、そこで納得と共感が得られればよい。最終的にはそちらの方が数が多い…


そもそもコメント投稿者を登録ユーザに限ることなどJANJANもやっていることであるから、本来なら大騒ぎすることでもないのだ。それがこうなるのが彼らの“不手際”だと考えるようだと、実は見事に釣られていたことになるかもしれない。なんと言ってもそれなりの資本を積んで、著名人も呼んで、鳴り物入りの代物である。老舗の“IT企業”がついていて、ネットを知らないはずもないのだ。

*1:【追記】7月28日だったようだ。