市民記者と自己責任


事情が事情なので具体的にどれということは避けるが、市民記者の一人がオーマイニュースに記事を投稿したことが原因で職を失われるという事態が発生したようだ。


記事の内容は市民記者の勤務先についてのものだったが、内部告発というほど大げさなものだったかというと微妙なものだった。勤務先の具体的な名称などは出ていなかった。現在、記事は実質的に削除されている。編集部による注は「申し出により記事を削除しました。」となっていて、「申し出」が市民記者によるものだったか、勤務先によるものかは不明である。コメント欄は何故か開いたままになっている。記事ごとにコントロールできるのだから、いっそ閉じた方がいいと思うのだが。



気になるのは、今回の問題が「ニュースのたね」に掲載中に発生したことである。

(1)「ニュースのたね」について
   オーマイニュースOhmyNews)の掲載記事のうち、「ニュースのたね」ページに掲載されている記事は、オーマイニュースによる編集作業を経ていない、市民記者から投稿されたままの記事です。
その点をご理解のうえ、お読みください。


「ニュースのたね」掲載中は原稿料も発生しないかわりに著作権は全て市民記者に帰属する。規約によると、

第13条(市民記者の責任)
2.市民記者は、投稿記事の内容および記事から派生した結果につき自ら責任を負うものとします。但し、当該投稿記事に対する当社の編集にもっぱら起因して発生した結果についてはこの限りではなく、当社が責任を負うものとします。

とあるから、この時点で名誉毀損等で訴訟を起こされた場合には責任も100%市民記者のものとなるだろう。ただし、オーマイニュースが訴えられ費用負担が発生した場合、市民記者の負担は最大50万円となっていて、オーマイニュースにリスクが無いわけではない。



先日も少し触れたが、この「ニュースのたね」への掲載順がよく分からない。2日ほど更新されなかったり、掲載される順番がばらばらだったりするところを見ると、市民記者の投稿から自動的に掲載されるわけではなく、なにがしかの人の手が介在しているように見える。


であれば、と思う。今回のようなことは防げなかったのだろうかと。


市民記者としては、記事の投稿時にペンネームの使用を申し出ることができる。申し出ていれば、ペンネームの使用を許可したり、あるいはそもそも掲載しないということになっただろう。勤務先の具体名が出ていないことから、このどちらかであれば今回のことは避けられただろう。だから市民記者の自己責任だったのだということになるのだろうか。「ニュースのたね」に掲載する前に「このまま実名で掲載して大丈夫ですか?」と編集部からの確認は無かったのだろうか。


オーマイニュース創刊前に何度か指摘したことだが、オーマイニュースの編集部にはしっかりとした編集作業を行うことで市民記者を守って欲しいという気持ちが私にはあった。掲載の可否判断が編集のもっとも重要なポイントであることは言うまでもないことだ。実名主義を主張するならなおのこと、そこをしっかりしなければ善意の市民記者が傷つくだろうと。市民記者と言えば聞こえはよいが、要するに素人なのだから。


今回のようなことが続けば一般の市民記者は萎縮してしまうだろう。直接的な損害は市民記者にかかるわけだが、長い目で見ればオーマイニュースにも大きな損害になる。事情が詳らかでないので今回のことで編集部を非難することは避けるが、こうしたことが続かなければよいがと思う。