デマと誤報


昨日の秋葉原の通り魔事件で産経が犯人の人物像として「金髪」と報じていたのだが、結局あれはなんだったのだろう。現時点でも特に訂正が無く放置されている。


単純には、現場での目撃情報に「金髪」という単語が含まれていたのだろうとは想像できる。現場は集団パニックにようになっていたのだろうから、そういう誤認が生じること自体はあり得るだろう。ただ、あれだけの人数がいたなかで、皆が皆「金髪」と誤認したはずはない。


考えられるのは、以下の2通りだろうか。

  1. 産経が取材した人物がたまたま「金髪」と誤認していた。
    • 複数人に取材していれば、「金髪ではない」という情報もとれたはず。
  2. 一時的に「金髪」というデマが流れ、それを信じている人たちをたまたま産経が取材した。
    • 直接の目撃者かどうか確認をしなかった。あるいは複数箇所で取材をすることを怠った。


どっちだったのだろう。あるいは別の事情があったのだろうか。産経は上記の記事の冒頭で以下のように報じている。

暴走トラックが横断者を次々とはね、車から降りてきた金髪の男が鈍く光るサバイバルナイフを振りかざし、通行人らに襲いかかった。

証言を引いた形ではなく、第三人称の視点の文章である。「金髪」という部分以外は概ね事実相応ではあるようだが、結果的にはこれは「見てきたような嘘」になってしまっている。犯人が現場近くで事件発生後短時間に逮捕されたことは不幸中の幸いだったが、万が一逃亡していた場合、この報道がその後の障害になった可能性はあるだろう。


混乱した現場の状況で起き得ることだとは思うので、それほど強く産経を非難するつもりはない。ただ、何故こういう記事が生まれたのかというのは、検証して欲しい。デマは何故起こるか、それを防ぐにはどのようにしたらよいかということを考える材料になると思うからだ。そういうのも報道だろう。


.