さよならオーマイニュース


このカテゴリタグを使うのもこれが最後かもしれない。


オーマイニュースは創刊2周年を経て、総合ニュースサイトとしての看板を降ろし、「より生活に密着した情報を発信するサイト」にリューアルするそうだ。その名も「オーマイライフ」。ドメイン名ごと変えるというのだから大変である。


なかなか強烈な人事政策が行われたりしたことからも分かるように、この2年間は結局失敗でしたといっても特に驚く人もいないであろう。ソフトバンクが投資した額が日本分だけだと7億程度で、私はかつて社員30人に一人頭ざっくり年間1000万なんて下世話な見積をしたが、まあそんなに悪くない線だったのかなと思ったりもする。


何故オーマイニュースが失敗したのかについては、私なんかよりよほどしっかり論じている方が多いので、そちらにゆずる。私からのお薦めは例えばParsleyさんの以下のエントリである。

かっこつけるわけではないが、私は未来について考えてみよう。オーマイライフはどうなるだろうか。



まずオーマイニュースが何に変わるかについては以下の記事が詳しい。


もうタイトルだけで言い尽くされているといってもいいだろう。今まで通り読者からの投稿に原稿料を支払う形態には変化は無く、ただし今までのような時事ネタや政治ネタではなく「商品やサービス体験記」を中心に取り扱うということである。その理由はぶっちゃけ「政治経済、といっても企業様は広告を出しにくい」からだそうだ。


私はかつて以下のように書いた。

替わりに市民記者のもっとベタで小さな記事をどうぞと言えばいいではないか。これからの時期、秋桜の開花時期を報せる記事を日本全国から募ればよいのだ。近所の交通事故の多発する場所を地図と写真付で全国から募ればよいのだ。そういう記事が一つだけなら日記と揶揄されもするだろうが、一つのテーマで数を揃えれば新しいインフラとなりうるのだ。

この意味では、今回の方針変更には賛成だと言ってもよい。今ではすっかりTVタレントになってしまった初代編集長が時事・政治ネタに肩肘をはったものだから、空しい炎上騒ぎの時にしか注目されないサイトになってしまったことを考えれば、私は地味でもこうした生活情報をコツコツと積んでいくほうが他には無い得難いサイトになったのではないかと思う。



しかし、だ。必ずしも私が望むようなサイトになるわけでもないらしい。以下は上記のJ-CASTの記事から。

まずは「マネー」のカテゴリーから記事の募集を進めており、順次「IT・家電・モバイル」「住まい・生活」などの16分野に拡大していく。「消費者視点」の体験レポートなどを重視する一方で、編集部から原稿依頼するなどして「専門家視点」の記事も掲載していくという。

タイアップ企画とバナー広告の二本柱で黒字化を目指したい考えだ。

商品レビューのような記事に特化し、その分野での広告収入を上げることが次のビジネスモデルである。



ここで私は「暮しの手帖」のことを考える。「暮しの手帖」は日用品や家電製品などの厳格なテストとレビューによって知られた雑誌であり、テストする製品はメーカーからの提供を受けず普通に市場で購入し、さらに一般の広告も一切載せないことでも知られる。


これはもうある種の極地に位置する雑誌だから、このようにしなさいとは言わない。しかし、極点に位置する星は方向を示すのである。再びJ-CASTから。

「記事ごとのページビューを見ると、商品やサービスの体験記事が、非常に人気がある。原稿料を支払う関係で、銀行口座まで登録していただいており『身元のはっきりした方』による情報発信が行われる、というのが大きな特徴」(小宮社長)


というわけで、「実名主義」が信頼を担保するというのが3人目の社長にしてさえあいもかわらぬオーマイニュースの方針と主張である。そして私はこれまでその実名主義は非難せず、彼ら編集部がまともな仕事をしないことをずっと批判してきた。小宮社長の言葉を見る限り、これまでの私の視線を特に変更するべき理由は見つからない。


広告収入がのどから手が出るほど欲しい企業が、これまで通り「実名主義」を隠れ蓑に信頼せよと主張し、ろくな編集もしないで情報を垂れ流すのであれば、オーマイライフは今までよりよほど有害なサイトに変わりうるだろう。


想定しうる事態はいくつも想像できる。ゲハ板で常に行われているゲーム機論争が飛び火するくらいならかわいいものである。企業のいわゆる「工作員」が自社商品礼賛ならまだしもライバル商品をくさすようなことがあれば、そしてそれがバレれば、ソニーゲートキーパー騒ぎの再来だ。まともな企業ならそんなことをするところはほとんど無いだろうが、マルチ商法・トンデモ系の商品・怪しげな金融商品などを扱っている連中にもともと倫理観など無い。こうした商品の事実上の広告が記事に紛れ込むことをどう防ぐか。しかもそれに原稿料を払うというのだ。折しもリニューアルに合わせて『まずは「マネー」のカテゴリーから記事の募集を進めて』いるそうだから、のっけから目が離せないと言ってもいい。


こういう事態は「実名主義」だけでは防ぐことができない。銀行口座は押さえても所属企業の社員証まで確認はしないだろう。結局、編集部のプロとしての仕事がそれを支えるしかないのだが、今までの経緯からも首脳部の言葉からも期待しろというほうが無理だ。まだ右や左で燃えていた頃のほうがマシだったなどと言われないようにして欲しいとは思うが、むしろ今までよりも殺伐とし炎上も増えるのではないかというのが予想である。



とはいえ、最後だから別れの挨拶はしておこう。お疲れさま。そしてさよなら。