よく見ていますねなどと言ってはいけない。

本屋がある。店構えは三間くらいか。木造で奥は自宅を兼ねている。大通りの歩道に面して、ドアなどはない。開けっ放しである。なのに昼間でも店の中は薄暗い。煙草屋を兼ね、おばさんとお婆さんが店番をしている。今は少なくなった古いタイプの本屋である。

ぱっと見、エロ本屋に見える。

店の正面にある大きな台にエロ本が平積みされている。マンガ雑誌の平積みよりも明らかに面積を占めている。諸事情で最近はエロ本の種類は減ったと思うのだが、こんなにあるのかと思うほどある。店内のエロ本率も高い。わずかだが普通の文庫もあるにはあるが、エロ小説からエロ写真集、エロビデオまでその筋の品揃えが他を圧している。それも今時の「エッチな雑誌」という風情のものばかりではない。昔ながらのどぎつい「エロ本」が、それなりに人通りのある歩道に面して堂々と並べられている。

年々、規制が厳しくなってエロ本の扱いには関係者各位苦労しているはずだ。出版社はシールで封印し、コンビニは普通の雑誌との間仕切りを設けた。そうした世の中の変化は、その本屋には全く影響していないように見える。もっとも、客が入っていくところも出てくるところもおよそ見たことがない。それはそうだろう。昼の日なかに入るには敷居が高すぎる。だが、夜は早い時間に閉まる。

その店の前を通りかかる。通りすぎるだけなのだが、目の隅には入る。風の強い日などページがめくれて、とんでもないポーズの女性の写真がはためいていたりする。つまずいて転びそうになる。もはやセクハラである。だが、まあ風のせいだ。とりあえずそういうことにしていた。

その店の前を通りかかる。雑誌は変わる。今月は、女子高生らしき制服を着た女の子が並び、スカートを持ち上げている写真が目に入る。風があるわけではないから、表紙なのだろう。耐性がついているので、そのくらいの写真では動じなくなっている。なのに通りすぎてから何かが気になる。なにか変だったと思うのだが引き返すほどでもない。帰り道にまたその店の前を通る。何が変だったのだろうと思い、平積みされたエロ本を見た。謎が解けた。

ただスカートを持ち上げているのではなかった。その下のパンツが膝の上まで下がっていた。
いや、それ道端にさらしてたら犯罪だって。おばちゃーん。