にぎにぎ

数日前にこんなエントリを書いたせいで、こんな記事を見かけると、どれ読んでみるかという気になる。

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 ↓(肝心の報告書へのリンクが無いのでGoogle

まず「NHK“約束”評価委員会」という名称だが、こういうものの途中にダブルクォートが入るというのも珍しい。正しく“約束”の部分を発音する際は、頭の左右に両手を上げて、人差し指と中指をそろえ“にぎにぎ”としなければならない。どういうアクションか分からない人はオースティン・パワーズの2本目とか見て欲しい。“モージョー”ってやつ。以下、私が“約束”のように表記した場合は、常にそのアクションが伴っていると思って下さい。さあ皆さんごいっしょに。“約束”(にぎにぎ)。

このNHKの“約束”というのは、一連の不祥事をうけてNHKが“反省”したことを示すために“視聴者のみなさま”と昨年の6月に交わしたものである。その全文はここにある。全部で6項目。マニフェストとかビジョンとかにしなかったのは大変結構である。内容も実に納得のいくものだ。当たり前のことしか書いてないもの。

NHK“約束”評価委員会は、この“約束”がきちんと果たされていたかを評価するために設置され、NHK外部の3人の委員からなる。“約束”の発表から一年が経過し、果たして結果はどうであったかということで、このたび報告書が発表された。

報告書全文のPDFはこれである。“約束”がA4一枚にじゅうぶん収まるのに対し、報告書は80ページもある。増えるワカメちゃん以上の増え方である。これが朝はラスターPDFだったものだから、実に24MBもあってうんざりしたのだが、夜になるとベクターPDFになって583KBになっていた。慌て者の担当者がいたのであろう。

内容の方だが、80ページの中に53ものグラフがある。要するに世論調査の固まりである。たった3人の委員がこれをこなせるとは思えないから、相当数のスタッフとマーケティング屋さんやコンサル屋さんが飛び回ったのであろう。え?委員会は“執行部とは独立した形”で?ふーん。そういえば学生の頃、末端のアンケート調査員のバイトをしたことがあるが、あれは辛いバイトだった。みんなお疲れ。

だがしかし、そんなにたくさん調べたのに産経新聞のネット媒体である“イザ!”は、たった一つの調査結果だけを取り上げたのだった。いわく。

 同委員会が今春、視聴者3600人を対象に、ラジオも含めたNHKの8チャンネルについて「いくらなら払ってもいいか」などと質問。地上放送(総合、教育、ラジオ第1・2、FM)は月額1780円となり、受信料1395円(カラー契約)を385円上回り、衛星放送(3チャンネル)も計1245円で現行(945円)を300円上回った。

報告書内で該当するページは26ページからである。調査手法として、CVMだのWTPだのWTAだの見なれない用語が並ぶが、いちいち辞書的な解説がついているので、この手のことに詳しい“アルファブロガー”の解説エントリを読んで、さらに途方にくれる必要も無い。ちなみに用語の解説はあるが、実際に質問に使用した文章そのものは載っていないので、探しても無駄である。

さて肝心の調査だが、要するに「NHKのサービスに“最大で”いくらまでなら払えるか?」という質問をして、それをもとにNHKのサービスの値段を算出しようというものである。少し前に「きっこの日記」は2億円とか言ってたようなものだろう。ちなみに「NHKが一部のサービスを止めたら、代わりにいくら欲しいか?」という質問もしてみたが、ろくな回答数が集まらなかったので忘れることにしたそうである。うん。そんなこといきなり聞かれたら私も困る。もっとも最初の質問もなんだかんだで1000人ちょっとしか使える回答が集まらなかったそうで、100人の村があるとすると28人分というところか。残りの72人がどういう表情をしていたのかは伝えられていない。

で、結果だが、なぜかラジオ第2放送は73円とかチャンネル毎に値段がついている。見積もりというのは明細を細かく書けば書くほど、たいてい値段は上がっていくものだが、そういう調査手法なのだろう。しかも“最大で”と聞いているのであるから、要するにこれは今のNHKの価値はどうがんばってもこの値段辺りが限界という理解でいいのかな?この手のことに詳しい“アルファブロガー”の方に「YES」か「NO」かだけで解説して欲しいものである。

個人的な感想としては、NHK受信料集金人5700人全員にこの“お値段”と“現場”の落差がどのくらいであるかをぜひアンケートしてみて欲しい。「この値段の受信料であなたのお仕事は楽になると思いますか?それとも年に何回くらい殴ったり殴られたりしそうですか?」