Digg/Pliggにおける「カルマ」とは
昨夜の「スラッシュドット篇」に続いて、今夜は「Digg/Pligg篇」である。え、「Grip 報道メディア篇」はどうしたかって?それは次回以降になります。自ら本質ではないと承知している件で、まさか3本も書くことになるとは思わなかったが、まあ夏の自由研究だということにする。
「Grip 報道メディア設立企画書」がコピーすることを最初の目標として掲げた「Digg」と、そのためのソフトである「Pligg」とは何だろうか?
「Digg」は技術系のニュースサイトとして2004年の11月にオープンした。それから2年足らずのうちに急成長し、今や老舗かつ王者の「Slashdot」に追いつこうという勢いである。(参考記事)おかげでSlashdotの創設者は「重要でない10人」に選ばれる羽目になったのだ。だが、私はこの件があるまでDiggを知らなかった。
Diggにおけるカルマの扱いを知るためにまずDiggのFAQを読んだ。たった20項目しかないのだが、そこに「karma」の単語は無い。次にアカウントを取得して登録ユーザとなった。ユーザーのプロファイルを表示したが、そこにもカルマは無い。「Top Digg Users」というユーザーのランキングページにも無い。その他Diggのトップページからいくつかリンクをたどったのだが、どこにもカルマについて記されてはいなかった。Diggのカルマはどこにあるのだろうか。
Googleで「digg karma」を検索すると80万件近くがヒットする。だが、よく見ていくと分かるのだが、これは例えば「Spam Karma」というスパムフィルタリングソフトについてDiggで言及されたものなどが大半である。Digg自体の機能としてのカルマではないのだ。それでもしつこく検索条件を変えていってようやくDiggのカルマについて言及したものを見つけた。
Diggの創設者に対するインタビューである。その中でもkarmaが登場するのは一ヶ所だけ。その部分を引用しよう。
We also have a system we call karma that helps prevent abuse of digging.
ここには、カルマが荒らしとしてのDiggingを防ぐ機能だとある。では、Diggingとは何か。
スラッシュドットとDiggの共通点は、基本的にユーザーが記事を書き、ユーザーがそれにコメントするという大枠である。最大の違いは、前者には編集者チームがあってユーザーが投稿した記事の中から掲載するものを選ぶのだが、後者には編集者はおらず、掲載する記事を選ぶのもユーザー自身だということだ。
Diggの記事は「Popular Stories」と「Upcoming Stories」の二つに分かれている。「Upcoming Stories」はユーザーが投稿した新着記事であり、玉石混交と言っていい。これをユーザーが読んで価値のあるニュースだと思えば「Digg」のボタンを押す。日本的に言うと「へー」ボタンと言えばいいか。あるいは価値が無いと思えば、「Bury story」のボタンを押す。こちらは「Dugg」と呼ばれる。要するにブーイングである。このユーザーの投票によってプラスの評価が高まったものが「Popular Stories」に昇格する。注目記事ということだ。
このシステムの問題はユーザーが悪意を持ってDigg/Duggを行うと、システム全体がうまく機能しなくなるということだ。先の引用はこの点についての質問に答えたものである。まず基本的にユーザーの数が一定量を超えれば、一部の悪意あるユーザーの行為は問題ではなくなるとした上で、さらにカルマシステムもあると述べている。続きを引用しよう。
The system knows the difference between users who log in and digg a story one time, or users that are created just to add a digg to a story, and someone who's on the site a lot, digging a lot of stories. We can rank those capabilities.
これだけを読む限り、Diggにおけるカルマシステムは比較的単純なものに思える。diggしたのが普通のユーザーであるか、diggの票を稼ぐためだけの目的で作られたアカウントであるか、あるいは滅多矢鱈にdiggしまくるユーザーであるかを監視して反映しているというに過ぎない。
結局のところ、Diggにおけるカルマは目玉機能として前面に現れるようなものではなく、ユーザーが特に意識するものでもないようだ。価値判断が含まれているものにも見えない。従って、Grip報道メディアにおける「ユーザーカルマ」の原型とは考えにくい。
次にPliggである。「Pligg」はDiggと同じようなサイトを構築するために作られたソフトウェアである。初めにスペインで「meneame」として開発され、これを元にしたものが「Pligg」だ。GPLで配布されている。
Pliggあるいはmeneameについてはこのページが参考になるだろう。ここにPliggにおけるカルマの説明もある。
14.投票とカルマはどう動くの?
登録済ユーザと匿名ユーザでは一票の重みが異なり、これがカルマと呼ばれます。匿名ユーザのカルマは4ですが、登録済ユーザのカルマの初期値は10で、重みが倍以上違ってきます。さらに登録済ユーザのカルマは毎日再計算されます。詳しくは se recalcula el valor del karma をお読みください。
すなわちユーザーの評価値であるカルマをDigg/Duggする際の一票の重みとして直接反映させるということだ。本家meneameのユーザーリストを見ると、たしかにはっきりカルマが表示されている。ではそのカルマはどのように評価されているのか。
そう思って開いたページはスペイン語だった。
正直がっくりしたが、そこにはカルマの計算ルーチン部分のソースコードへのリンクがあった。スペイン語よりはPHPの方がまだ意味が分かる。しばし、ソースをにらむ。
……(−_−)……(゜Д゜)……(?_?)……(゜∀゜)……
えー、カルマを計算するルーチンは30行程度に収まっている。カルマを決定するパラメータは概ね以下のようである。
- ユーザーが投稿した記事のうち、注目記事として掲載された記事の数。
- ユーザーが記事に投票したもののうち、注目記事として掲載された記事に投票した数。
- ユーザーの記事に寄せられた投票のプラス・マイナスの数。
これはつまり、このサイトへの貢献度をほぼ直接に数値化したものと言っていいだろう。そしてこのカルマの方向性はスラッシュドットと基本的に同じ物である。また、Grip報道メディアにおける「ユーザーカルマ」の原型と考えても良さそうだ。
ようやく泉氏が語ったユーザーカルマは「Pligg」に元々あったものをそのまま使用しただけという言葉の裏が取れそうな次第となりました。というわけで次回はようやく「Grip 報道メディア篇」です。既にお分かりの通り、全体構想を固めずに進めているので、どこに着地するか私にはわかりません。
【追記】