ディラックの海に沈む

本ブログでは歌田メソッド(1.0)の実践を行っているためにネット上の資料を求めて山ほどGoogleの検索ボタンを押す羽目になる。しかし、もちろんGoogleさんが全てを知っているわけでもない。時としてWaybackMachineやその他諸々の手段を頼る。まあ珍しくもないことではある。そういえばWeb検索の極意を記した本も何冊もあった気がする。読んだこと無いけど。


だが、どこを探しても無い物は無い。もう無いったら無いのだ。


たとえば久しぶりに更新したウォークマンのシリーズでのことだ。辻野コネクトカンパニーコ・プレジデントのWalkmanAシリーズ発売を前にしたインタビューが、SONYのサイトにかつてあった。辻野氏の思い入れがたっぷりとつまった非常に興味深いインタビューであり、発表当時一部では話題になったものだ。

当然今後のシリーズに取り入れたいのだが、これが無い。SONYのサイトはもちろん、Googleのキャッシュにも無い。WaybackMachineも知らないと言う。残っているのはそのインタビューに言及したブログやニュースの記事か、今でもSONYのサイト内に残る行き先の無いリンクだけだ。まだそのインタビューが掲載されて1年に満たないというのに。


あるいは「Grip Forum」のことだ。泉氏が企画した報道機関用サイトは最終的に3つの文書を残したが、結果として実現したものはなかった。唯一実際に稼動したものが、「Grip Forum」である。リンクはしたものの切れている。これは泉氏が以下のエントリで閉鎖すると述べている。

『GripForum』と『Heart-Link』は、サーバーを自分で維持し管理運営することはできないので閉鎖しました。ジャーナリストとしての配慮が足りなかったことが原因で、突然の閉鎖にならざるを得ない状況になってしまい、本当に申し訳ありません。長い間かわいがってくださってありがとうございました。

往時をしのぶことができるのは、唯一見つかったGoogleキャッシュだけである。Grip Forumが開設されてまだ1年と少しだというのに。


電子データもまたこれまでの他の記録と同じように永続的なものではない。それは当然のことだ。だがわずか1年でこれほど失われてしまったデータのことを考えるとき、私は少し寂しい想いをする。データそのもののことではない。そこには必ずしもうまくいかなかったかもしれないが、誰かが何かを賭けたものがあったはずだからである。