臓器移植法改正案

 採決では両党とも党議拘束はかけない方針。法案は、河野太郎衆院議員(自民)、福島豊衆院議員(公明)らがまとめた家族同意案と、斉藤鉄夫衆院議員(公明)らによる年齢緩和案。

 家族同意案は「脳死は人の死」を原則とし、患者の意思が不明でも、家族の同意で年齢にかかわらず臓器提供を可能とする。年齢緩和案は、移植に限り「脳死は人の死」とし、提供者の意思表示を必要とする現行法の考えを踏まえたうえで、提供の年齢制限を「15歳以上」から「12歳以上」に緩める。

年齢緩和案は除外規定が3歳若くなるだけで、それほどの大きな改正ではない。高校生以上を中学生以上に引き下げる程度のことである。

家族同意案で大きいのは本人の臓器提供拒否の意思が無い限り、後は家族の同意で可能とするところである。本人の意思がある意味問題にされないことによって、現在の15歳以上という除外規定が外れる。厚労省の脳死判定基準脳死判定の除外例として「小児(6歳未満)」を挙げているので、実質的には6歳以上から臓器提供可能となるのだろう。

現行法は本人の生前の臓器提供の意思を表明する書面が必須なので、これが無くなれば臓器提供が増えるという目算だ。


どうなのだろう。この改正でも結局、家族の同意は必要になる。ドナーカードの普及率は10%を超えたそうで、本人の意思表示がある例というのはそれなりに増えているのではないかと思う。しかし、実際の脳死判定→臓器移植の例はここ10年近くで50例足らずだという。特に増えているという様子も無い。結局、家族の同意というハードルが高いのではないだろうか。

どこかの時点で医師が家族に同意を求めるわけだが、ここでドナーカードなどの形で本人の意思がはっきりしていれば、医師としては説得もしやすいことになる。家族としても本人の意思を尊重するという選択肢が多少ともなり取り易いだろう。そうしたものが無ければ、かえって余計に家族の同意は取りづらくなるのではないか。

現状は、ドナーカードという物をきっかけに家族内である程度話し合いが起きているのではないかと思う。それが、この改正案だとドナーカードは臓器提供を拒否するための物となってしまう。ということは、そういった話し合いをしたこともなく、全く心の準備の無い家族がますます増えるということになりはしないだろうか。

臓器移植を増やしたいという意見には賛成しないわけではないのだが、この改正案で増えるかというとちょっと疑問に思う。まだそこまで“覚悟”の出来ている人は少ないのじゃないかと。今はまだ臓器移植について考える機会を増やすことを考えた方がいい時期じゃないかと。例えば運転免許証・保険証・パスポートに今のドナーカードの機能を持たすとか、そういった方に注力すべきじゃないだろうか。


海外ではこの家族同意案を採用しているところが多いともあるので、どういう経緯をたどってきたのかというのは興味はあるが、調べがついていない。


【追記】

とりあえず、今期も成立の見込みはあまり無いようである。