NPO法人格と募金と情報開示

あまり深入りもできないが。

ここに書かれているように重大な問題がもしあり得るとすれば、やはり関係する諸団体の行う情報開示の部分であろうとは思う。

前者に基づいてNPO法人格を取り、さらに後者に基づいて国税庁の認定を受けると、寄付行為に関して税法の特例措置が受けられる。NPO法人格さえ無い場合は、全て贈与と見なされて最大50%の贈与税がかかる可能性があるはずなのだが、真っ当な活動をしている限り実際に国税庁がやって来ることはまず無いようだ。

あまりにも無茶苦茶な場合はこういうことになった例もある。

読売新聞等によると街頭募金活動を装って通行人から計約2000万円をだまし取った として、大阪府警捜査2課は2004年7月29日、難病の子どもの支援等を名目とする自称NPO団体「NPO緊急支援 グループ」の実質的代表、横井清一被告(34)を詐欺容疑で逮捕した。

この場合は、活動実態が全く無く、よって詐欺罪の摘要となったわけで、今話題になっている事例とは要件からして違うということは指摘しておく。実態が無いということはまず考えられないので、詐欺として立件されることはありえないだろう。


一番「きれい」なのは、NPO法人格(あるいは公益法人格)を取得して、基金を設立し、そこで寄付を募ることではあろうと思う。そうすれば恒常的な募金活動を維持することができるし、余剰金を基金にすることで、緊急な貸し付け等も容易になる。情報開示や監査など手続きは増えるが、過剰な批判にさらされて消耗する余地は間違いなく減るだろう。広報活動という意味では今まで通り個々の患者の事例を出せば、訴求力という意味で劣ることも無いと思う。かつてに比べればNPO法人格の取得は容易になったわけだし。

もちろんそれを一家族に求めるのは酷だ。TRIO JAPANNPO法人になるか、あるいは日本移植支援協会が直接基金の運営を行えばすっきりはする。実際、日本移植支援協会はある程度各患者の基金の会計報告を掲載しているのだが、対象が外部団体であるために監査することもできないし、継続性という意味でもむしろ患者側の負担が大きいと思うのだが、どうなのだろうか。あえて事例毎に小分けにしているメリットがよく分からない。


もっともあしなが育英会などは歴史も実績も十分なのにNPO法人ではないようである。それでも収支報告などはそれなりに詳しいものが出ている。


本当にまずいのは、先に挙げた詐欺として立件された事例のようなことが起きると、他の大多数の真っ当な団体の活動まで阻害されてしまうことである。だから情報開示を求められるし、それを制度的に保証するための法整備なども行われるわけだ。それによって税制上だけでなく、様々な保護を受けることもできる。そうした公的な制度に頼らない場合は、あしなが育英会のように自律的な努力によって補う必要がある。結局、そうした責任というのからは逃れられない。

もちろん逆の場合も考えなくてはいけなくて、不当な非難によって肝心の寄付の目的が阻害されるのはもちろんまずい。だが、それよりもっと怖いのは狼少年化したり、批判することがタブー化したりして、本当に悪質な者が出てきたときのチェック機構が働くなることだろう。そうなった後で問題が表面化すると、反動が大きくなりすぎるものだ。