洋書の値段


別に池田先生に異を唱えるというわけではなく、意外に思ったので書いておこう。何が意外だったかというと、Amazonで洋書を買って1ドル=168円換算になっているということ。自分の感覚と大きく違っていた。


自分が買うのは基本的にペーパーバックばかりで、マスマーケット版、つまり普及版と銘打たれたものなので日本だと文庫本にあたると思う。版元が同じなものが多いこともあって定価7.99$なものが多い。Amazonの自分の購入履歴を調べると私はこれを900円前後で買っていることが分かる。Amazonなので送料込みでこの値段だ。1$あたり111円〜114円くらいの勘定になった。


なんと池田先生の買っている専門書とのレートの差が50円近く、単純に1.5倍である。びっくり。



【追記】再販制度の無い国のことなので、特にベストセラーと言えないものでも値下げどころか値崩れを起こす場合もある。25.95$のハードカバーが6.39$で売られている例なんかもあるので、こんなのを参考に通貨レートを出すと無茶苦茶なことになる。とはいえ、ある程度需給の落ち着いたペーパーバックだと定価通りに売られている場合が多いので、私は定価を基準に採用することに特に不安を覚えない。【追記ここまで】



私が生まれて初めて買った洋書はちゃんとテニエルの挿絵の入ったアリスの二巻で、これは町の本屋で買ったが、特に通貨レートについては気にしなかったので覚えていない。その次はというとギブソンの最初の3部作の頃だから、ざっと20年近く前である。これは紀伊国屋で頼んだのだが、1$=250円換算でふえーっと思ったことをはっきり覚えている。通常の為替レートはもちろん上下はあるが、水準的には今とたいして違いは無い。おまけに届くまでひと月待ち。


まあ仕方が無いとも思いながらばかばかしくも感じたので、それからずっと洋書を買うことはやめてしまっていた。Amazonが登場した時に洋書の値段があまりに「良心的」なのを見て気楽に買うようになったのが、ここ8年くらい。私にとってAmazonは第一に洋書が安く買える店なのだ。


それで、なんとなくAmazonみたいな会社のことなので、ドル/円の換算レートなんて商品の区別無く一律だろうと考えていたので、こんなにも差がある場合があるというのにすごく驚いた。




ところで、ここで私は別のことが少し気になっている。アメリカのペーパーバックを輸入して、だいたい1000円弱で買える。これが翻訳されるとページ数的な分量が増えて上下2巻に割れることが多い。それが上下それぞれ1000円弱する。通貨レートではないが、単純に2倍である。


もちろん翻訳という付加価値がついている。文庫本といえど紙も装丁も、ペーパーバックとは雲泥の差である。でもな、と思う。2倍なのか、と。


私が読んでいるのが需要の少ないジャンルに偏っているので余計感じるのだが、ここ10年くらいの文庫本の値上がりって、とてもデフレの国にいるとは思えないほどだったという印象が強い。CDやビデオ、最近はゲームなどでたとえば日米の価格差というのはよく言われるのだけど、書籍にもその波が来ているんじゃないかと密かに恐れる。


そういえば自分はほとんど行かないけれど、時々コンサートのチケットの値段を見てさらに驚く。昔はアルバムを買うのと同じくらいの値段だったと思うのだが、最近は1万円を超えるものが珍しくないようだ。これも自分の見ているものが限られているのだろうか。




その経済的な要因というのはいろいろにあるのだろうが、私は単純になんだか娯楽の高い国になってしまったのだなと思う。そしてそれは、もしかしてこの国って貧乏なの?という自分の最近の継続的な疑問の一つの風景になっているのである。



.