ハリーポッターと電子の本


なげやりなタイトル。


というわけで、電子書籍版のハリーポッターシリーズを買った。全巻で$37くらいか。PotterMoreという直販サイトで購入してダウンロードしようとすると、使用する電子書籍リーダーを選べと言われるのでKindleを選択。Amazonのアカウントを教えるとAmazonクラウドにファイルを転送してくれて、Kindleはそこからダウンロードすることになる。Sony Readerなんかも選べるようになっていたが、似たような流れになるのだろうか。直接ファイルをPCにダウンロードする手段もあって、これはiBooksKoboなど用だそうだ。


ダウンロードしたファイルには表紙の次のページに購入者IDが記載されていて、ウォーターマークが仕掛けられているよと書いてある。つまり、購入者ごとに微妙に違うファイルが配布され、誰が買ったものか販売者には分かる仕組みになっているわけだ。これが違法コピーへの抑止力となる。というか、なにかのはずみで自分のファイルが流出したらどんなひどい目に遭うかと考えるとこれはこれで怖い。



電子書籍化を頑なに拒んでいるとされたJ.K.ローリング氏が、今回のサイトを立ち上げたことの意味については、以下の記事がよくまとめていた。


はてぶなどを見ても「これはハリーポッターというお化けコンテンツを持っているからできること」的反応が多くて、それはもちろんそうなわけだが、注意しなければいけないのはPotterMoreの場合はポイントが2段階になっていてることだ。それは、1.出版社をすっ飛ばす。2.電子書籍プラットフォーマーをすっ飛ばす。ということで、たしかに両方一度にできる作家あるいはコンテンツは少ないと思う。だが、どちらか一方だけであればそれほどハードルが高いわけではない。


Amazonは(潜在的な人を含めた)作家に対して電子書籍化の直接契約ができることを宣伝していて、一時話題にもなった。これは、1.出版社をすっ飛ばす。方式だ。最近、日本の出版社が著作隣接権を求めている動きが出てきたのはこれに対する予防線的な意味合いもあるのだろうと思う。


次に2.電子書籍プラットフォーマーをすっ飛ばす。の方だが、以前にも書いたように海外の必ずしも大手ではない出版社−例えばBaen Books−は、自社の書籍をKindleなどで販売すると同時に自社のサイトでも直販している。品揃えや値段を見る限り、直販サイトのほうが優先されているように見えるし、読者としてはこちらのほうがお得である。


ただし、直販サイトの場合は電子書籍プラットフォームが持つDRMを利用できないという条件がつく。これは読者にとっては利便性という面で大きなメリットだが、出版側にとっては違法コピーの可能性という面で大きなデメリットだろう。PotterMoreのようにウォーターマークで防衛することはできるし、有効かもしれない。


日経は傍目にこっけいなほどKindleを「黒船」として大騒ぎしているが、こうやって電子書籍プラットフォーマーをすっ飛ばして商売しているところもあるというのは、日本の出版社にとって悪い話ではないと思う。



ところで、これで私のKindleの中のライブラリの内訳は、

  1. Kindleで購入したもの 2冊
  2. Kindle以外で購入したもの 15冊
  3. Project Gutenbergなどで入手できるもの 10冊程度

という具合になった。少し前に楽天三木谷社長『キンドルは「アマゾン専用端末」で、ほかのコンテンツを入れても自動的に消されちゃうんですね。』なんて大嘘をぶっこいていたが、あれが無知故ならそんな認識でKoboに参入して大丈夫かと思うし、故意のFUDならひどいものだ。というか、三木谷さんKindle使ったことないのかね。あれだけ英語英語と言っているのだから、普通に読書も英書だろうと思っていたのだが。


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