つきのね
ふと見上げると月が出ていた。
この前見た時は満月だったがと思う。一週間もあれば半分になるのは当然のこと。今夜の月はまだ上弦に少しふくらみを残している。
あんな大口を開けて笑う女の子がいた。自分も一緒になってもっと大きな口を開けて笑っていたのだろう。
月の下には暗闇が広がる。大きな池があるのだ。この街にはいくつかこうした場所がある。目をそらせばネオンがけたたましいというのに。
池に沿って少し歩く。ジョギングをしている人、自転車をこぐ人、ベンチに座り身動きをしない人。柵に近づいて池に映る月を眺める。不意に記憶の中の地図につながる。そうか、ボート乗り場はあっちだ。
桜の日。秋の夜。あれからどれほど離れたのか。
どうせ惚れるなら、泣いている顔より笑っている顔にしなよ。
月の傾きが少し増す。
うるさい、黙ってろ。