1.5卵生双生児

1つの卵子に2つの精子が受精して生まれたとみられる「準一卵性双生児」ともいうべき珍しい双子の存在を米英の研究者が確認したと、英科学誌ネイチャー(電子版)が26日、報じた。

この記事は47NEWS掲載のものですが、共同通信報なのでサイト内で全文が読めます。しかし、新聞社系のニュースサイトの悪弊の一つ、「関連リンクをろくに示さない」ところは相変わらずです。というわけで、「英科学誌ネイチャー(電子版)が26日、報じた。」を探しました。


見つかったのがこれ。


原文を読んでみると、47NEWSの記事は翻訳としても要約としても必要にして十分なものなので、今度は改めて訳すのはやめておきます。というか、出典として「英科学誌ネイチャー(電子版)が26日、報じた。」だけを示してこれというのは、いいんでしょうかね。こういうところの慣習はよくわかりません。


それはともかく。


この双子に何が起きたかというと、一つの卵子に二つの精子が受精して、遺伝子的に2種類の細胞が混在する個体が二人できたというものです。一卵性双生児の場合は卵子一つに精子一つで二人、二卵性双生児の場合は卵子二つに精子二つで二人なわけですから、この場合は1.5卵生双生児としてみたくもなります。二つの精子がそれぞれ性別決定遺伝子のXとYを持っていたために、双子の一人が卵巣と精巣を持つ両性具有者になっていて、それがこの発見につながる研究対象になる理由だったようです。逆に言うと、相当稀な事例であることは間違いないのですが、目立った特徴が無いためにこれまで見過ごされていた同種の事例があった可能性はあるということです。


それにしてもどういう風に一つの卵子に二つの精子が受精したのか?47NEWSの記事では訳出されていない部分を訳してみます。

可能と思われる経緯は二つある。

最初の可能性は、受精前の卵子細胞分裂を起こし、しかし分離はせず、二つの卵細胞にそれぞれ一つの精子が受精したというものだ。この後、卵細胞が完全に分離するまでに遺伝子が混じりあってしまったのだろう。しかし、受精前に卵子が分裂を起こすことは極端に稀なことだと考えられているとSouterは語る。

二つ目のもっとありそうなシナリオは、一つの卵子に二つの精子が受精して、3組の遺伝子を持つ胚を作り出したというものだ。その後、おそらく胚細胞が二つの細胞に分裂した段階で、片方の細胞からは精子Aの遺伝子が失われ、もう片方からは精子Bの遺伝子が失われたのだろう。

今のところ、はっきりしたことはまだ分かっていないわけですね。 ちなみにWikipediaで「キメラ」を引いてみると以下のような記述がありました。

医学・獣医学では、2個以上の胚に由来する細胞集団(キメラ胚)から発生した個体を指す。例としては、ニワトリとウズラのキメラがある。また、キメラ胚由来ではないが、1個体が異なった個体由来の血液細胞を同時に持っている状態を血液キメラという。1つ胚に由来しているが異なる遺伝情報を持つ細胞が部分的に入り交じるものをモザイクと呼び、キメラと区別する。この場合、非常に稀ではあるがヒトにも存在する。

この双子の場合は「モザイク」なのかな? さっきの羊とは違って、こちらは純然たる自然現象なので、もちろん倫理上の問題などはありません。双子は今はよちよち歩きをし始めたところのようで、二人とも肉体的にも精神的にも普通に成長しているそうです。この出生の際に起きたことで二人が余分な苦労を背負わないことを願います。 .