Sonyから英国国教会への手紙


SonyPS3用ゲーム「レジスタンス-人類没落の日」の中でイギリスのマンチェスターにある大聖堂内部が銃撃戦の舞台にされ、これに英国国教会が激怒、謝罪・販売停止等を求めたという件ですが、Sony英国国教会に対して謝罪の手紙を送ったようです。


その謝罪のメールが英国国教会のWebサイトに掲載されています。ちなみにもう一方のSony―正確にはSonyConputerEntertainmant(SCE)―のWebサイトではこの件に関する情報が何一つ見つかりません。というわけで、英国国教会のサイトに掲載されたものから、Sonyの謝罪の手紙を読んでみましょう。



まずはSonyからの手紙本文に入る前に経緯が記されています。それによると、6月15日の午後4時半にSonyからの返事を受け取ったそうです。「a letter」とありますから、電子メールではなく、書簡だったのでしょう。差出人はSCEのヨーロッパ法人の社長のようです。


次にこれを受けてのマンチェスター大聖堂司教からの声明が続きます。

私たちは、ゲーム中の建物がマンチェスター大聖堂であることをSonyが認めたことを知らされました。Sonyが謝罪の意を表したことに感謝します。

しかしながら、私たちの暴力に反対する立場、特にこの大聖堂の描写に見られるような銃の暴力に反対する立場には全く変わりがありません。

Sonyの私たちと話し合うためにマンチェスターを訪ねたいという希望を歓迎し、彼らを招待いたします。

Sonyとの会見で、私たちは未決着の要求、どのようにしてこのゲームが作られたか、この大聖堂のイメージはどこから来たのかについて話あうことになるでしょう。


上記のAFPBBの記事にはもう少しきつい表現があるのですが、少なくともこの声明には盛り込まれていないようです。



続いて、いよいよSonyからの手紙本文です。

拝啓 Govender司教様

6月11日の電子メールありがとうございました。

レジスタンス-人類没落の日」がSF作品であることをどうかご理解ください。

これは1950年代イギリスの改変された現実を背景にした空想上の娯楽作品です。歴史は書き換えられ、第二次対戦は起こらず、異星人の怪物が地球を襲って、人類は異星人の侵略から身を守るために必死に努力します。

笑っちゃいけないとは思うのですが、真面目な司教さんたがいきなりこの出だしを読んでいると想像すると、なかなかシュールです。まあ、どんなゲームかは既にご存知でしょうから、突然異星人の怪物とか言われてもなんとかなっただろうとは思うのですが。

物語の初めのほうで、マンチェスター大聖堂は野戦病院として人類の負傷者を保護するために使用されています。物語が第8章に達すると、大聖堂は無人で放棄されており、もはや礼拝の場所としては使用されていません。そしてその下りで、内部は異星人から建物を防衛するための場所となります。

最初は野戦病院として登場ということで、これだけならマシだったのかもしれません。しかし、あえて「もはや礼拝の場所としては使用されていません」なんて強調しなくてもと思います。これ気分を害されるんじゃないでしょうか。最後の一文はうまく訳しきれないのですが、要するに大聖堂内部が異星人との防衛戦の場になったということですね。

21世紀のマンチェスターにおける現在の問題と、異星人の攻撃にさらされた虚構の1950年代イギリスを描いたSF作品との間にいかなるつながりがあることも私たちは認めることはできません。作品を総合的にご覧いただければ、その内容も文脈も明らかだと私たちは信じています。

ここで、マンチェスター大聖堂の主張をばっさり否定。

従って、私たちはお互いの都合のよい時に喜んでこのことについてご説明いたします。

ここ、「demonstrate」とあるんですが、ゲームのハイライトシーンを協会側に見せて、「ほら人類愛を描いているんですよ」なんて説明するんでしょうか。

本作品の第8章でマンチェスター大聖堂を表現したことで、ご不快を与えることは決して我々の本意ではありませんでした。もし、私たちがそうしてしまったのであれば、心からお詫び申し上げます。


終わりに、皆様が法律家の相談を受けていることに私たちは留意しています。私たちは自らの方針に従って自分たちの製品とサービスのために必要な許可を全て検討していることを確信していますし、この作品自体についてもそうしたと信じています。

後は、終わりの挨拶と署名です。



こうした手紙のニュアンスがつかみきれないので、字面だけの印象ですが、SCE強気だな、というのが感想です。謝罪はしてはいますが、マンチェスター大聖堂からの具体的な要求に対する具体的な行動については基本的に一言もありません。話し合いの用意があるというところは前向きだと思いますが。ですから、まだしばらく続くのでしょう。


SF好きとしては、あまり「SFだから問題ない」というのを前面に出してほしくないなあというところです。じゃあ「フィクションだから問題ない」ならいいのかと言われると、それもちょっと。


それから、教会側が賠償金を求めたという報道でかなりSony側への同情が集まっているような気がしますが、おそらく「教会への献金を通じて社会貢献を」という意味合いでしょうから、このへんは日本の感覚とは随分違うんじゃないかと思います。



ところで、ハワード・ストリンガーCEOって、ナイトの爵位もお持ちですし、英国女王との夕食会に参加されたりしたこともあるわけですが、今、夕食会に誘われたらどうするんでしょうね。


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