チベット・台湾・香港、そしてコソボ


ブックマークや2chを見ると、ここで何故台湾が引き合いに出されるのか的反応があったりしますが、私には特に矛盾の無い態度に見えます。中国政府のここ数十年の政策は台湾もチベットも中国の一部ということで一貫してきているわけですから。


同時にこれは、中国政府が最も恐れていることを言い表しているとも言えます。要するにチベットの問題と台湾の問題が一直線上に繋がっているということです。台湾とは中国共産党政権が実効支配していないチベットであり、チベットとは中国共産党政権が実効支配している台湾だという見方をする人が世界中に増えることを恐れているでしょう。


台湾は、台湾自身の苦しみはありましたが、ここ60年にわたって平和に過ごすことができました。経済的にも繁栄しました。翻って今のチベットの状況があり、その差をもたらしたのは何か。今後、台湾がチベット化することはあり得るのか、あるいはチベットが台湾化することは可能か。そう考える人が増えることは中国政府にとっては看過できないことでしょう。本来ならその中間に香港があって、テストケースとしてはここ10年まずまず大過無くやってこれたように見えていたのですが、今香港は視界に入っていないようです。


ダライ・ラマ師自身は現在はチベットの分離独立を求めていないと公言していますが、だからといってこの「条件」で「対話」することはまず考えられません。そんなことをすればダライ・ラマ師の政治的な自殺になることはもちろん、チベットと台湾の関係に致命的なヒビを入れることになるからです。


もちろん温首相の狙いもそこにあるでしょう。これはむしろ中国政府的な教科書通りの発言であり、さすがにこれが効を奏すとは期待していないだろうとは思います。もし、そうでなく、これが「条件」として効力を持つと考えているのであれば、それはこれが意味をなすほどチベットの状況が悪いことを示していることになります。




昨日は日本がコソボの独立を承認した日でした。独立宣言から一ヶ月、ほぼ即日承認した米英仏独などとは間をあけた格好になりましたが、かえって意味ありげなタイミングになったものだと思いました。政府も報道も淡々としていましたね。既定方針通りだからとはいえ、嫌な汗をかいていた人もいたのではないかと思います。


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