クリーペル


市況ニュースと軍事航空宇宙技術ネタが二本柱というよくわからないニュースサイト、テクノバーンからの記事。

世界的ロケットメーカーとなるロシアのエネルギア社は18日、これまで40年間に渡って使われてきたソユーズ型宇宙船に代わる次世代宇宙船を「ソユーズK」と命名し、開発が最終段階に入ったことを発表した。

先日のアメリカのオリオンと同じようにロシアが開発している次世代の有人宇宙機の記事です。「クリーペル」(ロシア語読み。英語読みだと「クリッパー」)として知られた機体に決定したよというわけで、正式名称が「ソユーズK」になったと。

「クリーペル」についての日英露のWikipediaはこちら。

ロシア語だけど、図解の詳しい記事。


アメリカはスペースシャトルの替わりにカプセル型のオリオンを計画しているのに対して、ロシアはカプセル型のソユーズの替わりにスペースシャトルの操縦席部を切り取ったようなクリーペルを計画しているわけで、歴史の皮肉というか、面白いもんです。


ただ、ちょっとこのテクノバーンの記事は気になります。なぜかというと。

2006年6月、ロシア連邦宇宙局は予算超過によるクリーペル計画の一時中止と、代替となる宇宙船の開発を発表した。後日行われた説明によると、今後はソユーズ改良型をまず開発し、段階的に宇宙輸送システムを開発していくという

「これらを考えると、2から3段階に分けて、有望な輸送システムを作るという、エネルギア社からの提言を優先すべきである。第1段階としては、信頼性が非常に高く、かつ安価で、しかも40年間以上、軌道上の宇宙ステーション(サリュート、ミール、ISS)へ飛び続けている、ソユーズ有人宇宙船の改良である。」

In late July 2006, the Russian Space Agency and the European Space Agency agreed to collaborate on a different project to develop a new spacecraft. They decided to fund a study under a program labelled Advanced Crew Transportation System (ACTS) which will starting in September 2006 design and evaluate a capsule type concept, derived from Soyuz.

要するに今年の6月に「クリーペル」計画への予算援助は凍結、まずは現行のソユーズの改良という方針がスポンサーであるロシア連邦宇宙局から出ています。欧州宇宙機関ESA)との共同で次世代乗員輸送システム(ACTS)をソユーズの改良型として開発するというわけです。


製造元であるエネルギア社のホームページを見ると特にこの「ソユーズK」に関する発表はありません。ただし、7月の時点では「クリーペル」計画を全然諦めてない様子です。

気になるのは、テクノバーンの記事の元ネタです。探してみるとどうもこれのように思えます。

こちらは多少論調が違っていて、

  1. ソユーズKはデジタル制御機器を備え、ロシアのバイコヌールからもギニアからも発射することができ、月へ行って地球に再突入する性能を持つ。
  2. クリーペルも開発続行中だが、いくつか重大な問題が残っていてまだ時間がかかるが、最終的な成功を疑っていない。

というわけで、二つは別物という扱いです。



全体の流れから見てこのロシア電の方が真相に近い感じがします。